京都、八坂通の京料理、割烹 祇園 さゝ木

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コメ作りに関心を持ってもらうために

佐々木浩×野田昌生(兼業農家)×柊 徹(兼業農家)

佐々木浩が、各界の著名人を迎えて対談を繰り広げるシリーズ「人に味あり 味に人あり」。
第8回目のゲストは、佐々木と高校時代を共に過ごした兼業農家の野田昌生さんと、柊 徹さん。
去る5月10日、「祇園 さゝ木」が京都市内の小学生を対象に企画をした
「田植えの会」にも、全面的なバックアップを頂いた。
そのふたりが手塩にかけて育てる、滋賀・日野町産の「キヌヒカリ」は、
「祇園 さゝ木」で、寿司飯や、締めのご飯として登場する。
気心知れた同級生である3人が、4米づくりの現在、そして未来について語り合いました。


3人の出会いは?

佐々木(以下、佐):僕が奈良から滋賀・日野町へ引っ越してきたのが高校生の時だから、
ふたりとは、もうかれこれ40年近くの付き合いになりますね。

野田(以下、野):高校のクラスも学校も違ったけれど、いつもつるんでいたよね。

佐:鍵っ子やった僕の家が、同級生の溜まり場に。高校3年生のときに、自動車免許を取り、互いに車を運転しはじめ、
愛車の品評会をしたり。僕が滋賀の料理旅館「臨湖庵」で修業していた頃、古いアパートに住んでいて。
そこにもしょっちゅう、遊びに来てくれていたなぁ。

柊(以下、柊):あれから今まで、付き合いは途切れたことないですね。

現在は、生産者と料理人という立場だそうで。


野:私も柊さんも、兼業農家です。あれは6年前でしたか。佐々木さんから「米を分けてほしい」と相談が入りました。

佐:最初は野田さんからお米を仕入れ、それだけじゃ追いつかなくなり、柊さんにも相談することに。柊さんは米のクーラーを持っていて、収穫した米を冷蔵してもらえる。だからウチの店では1年中、ふたりが育てた質の高い米を使わせてもらうことができます。料理人の立場で言わせてもらうと、ふたりが作る米は、お世辞ではなく本当に旨い。

柊:日野町の水田は粘土質だから、そう思ってもらえるのでしょう。土に粘りがあると、栽培する米はもっちりとした独特の食感になる。僕らは子どもの頃から、この米を食べていて、それが当たり前だと思っていますが、「この地域の米は、もっちり感と甘みが凄い」といろんな方から言われます。

佐:ほんまにそう思いますよ。「キヌヒカリ」も「ヒホンバレ」も、他の地域の米と比べて、もちっと感が全く違う。

野:日野川を北側に越えたら、田んぼの粘土質は弱まるから、同じような米にはならないんです。
距離が3km離れているだけで、米の味が全く違う。


柊:僕が住む地域でも、谷沿いと川沿いの水田では、お米の味が違いますから。
例えば、最高級と称される、富山・魚沼産のコシヒカリも、ほんの一部の地域で栽培された米だけ。それと同じです。

佐:ふたりが作る米は、品質が高いうえ、値段がじつに良心的。ウチの店にはまず先にと、新米を一番最初に分けてもらえるのが嬉しいです。実際、お客様から「お米を分けてほしい」と相談を頂くことも。

柊:そう言ってもらえるのがとても有り難いです。今では佐々木さんが広報担当ですよ(笑)。逆に、佐々木さんに恥をかかせたくないから、米づくりにもより一層、拍車がかかります。僕らは米を作るだけでなく、もっと対外的にアピールしていきたいんです。なぜなら、米づくりの将来を考えたら、どこもそうだと思いますが、完全に後継者不足。僕が暮らす地域で百姓をやっている人間は、50代前半に数人いるくらいで、30代なんて若手は全くいません。魅力がないんですよ。なぜなら、お金にならないから。僕は兼業農家ですが、米づくりは、はっきり言って道楽の世界です。

野:僕も趣味の領域ですよ。

佐:高齢化がますます進むと、農家の人口も減る。となると近い将来、米を作らなくなり、耕作放棄地が出てきてしまう。
だって現状、何かしらの農業を営む人のなかで、専業農家は約20%しか存在しない。なかでも米専門の農家は7~8%しかいないのです。
今は、秋になれば一面、黄金色の田園風景が、新幹線に乗っていても見れます。だけど、あの光景が近い将来、
一面雑草になると思うんです。作れてたとしても麦でしょう。

柊:近い将来、絶対にそうなると僕も危惧しています。

野:となると、海外から米を輸入しないといけなくなる。

佐:今、米の自給率は96%あります。問題は、米の輸入で自給率が下がるというだけじゃない。農薬をたくさん撒かれ、
栽培された海外の米を、子どもたちが食べないといけなくなる。
じゃぁ、その子たちや、次の世代の子どもたちの将来はどうなっていくのか? 僕はそこに危惧しています。

柊:米はあって当たり前。それが、近い将来なくなるかもしれないという危機感がないんですよね。

野:だから、佐々木さんは「米づくりの素晴らしさを子どもたちに知ってもらいたい」という確固たる思いを持っているんですね。
僕もその考えに共感し、今回、佐々木さんが実施した、子どものための田植えの会のために、
約600平方メートルの水田を貸すことにしました。

佐:今日、京都市内のボーイスカウト、ガールスカウトの子どもたちに「田植え体験」をしてもらいましたが、彼ら、
彼女たちへの伝えたいことは至ってシンプル。米のありがたみや尊さを感じてもらいたい。
要するに、お茶碗についたご飯粒を、「もったいないから食べよう」という気持ちになってもらえたら。
そんな考えがあり、“祇園 さゝ木”子どもイベント「お米ができるまで」 というプロジェクトをスタートさせました。

柊:子どもたちに昔ながらの田植えを体験してもらい、夏には草刈りをし、秋に収穫した自分たちが作った米を食べる。
これは小さな一歩だと思うけれど、とても大きな一歩ですね。

野:最初は「田んぼの泥がぬるぬるして気持ち悪いー」て叫んでいた子も、最後のほうはとても楽しんでいましたね。
「もう一回、田んぼに入る!」って(笑)。

佐:田植えの大切さを知ってもらう以前に、「集う」って大切なこと。皆でおしゃべりしながら、作業をすると、どんどん楽しくなってくる。この感情が大事だと思います。秋には子どもたちが収穫した米を、天日干しにした後、飯盒炊爨(はんごうすいさん)します。炊きたてのご飯をおにぎりにして、皆で食べる会を予定しています。
子どもたちもそうだと思いますが、この僕も、今から楽しみでなりません。


“祇園 さゝ木”キッズ体験イベント「お米ができるまで」イベントレポートはこちら

第1弾:「祇園 さゝ木」で食べる、知る。お米のおいしさ発見!
http://gionsasaki.exblog.jp/21782974/

第2弾:「田植え」にチャレンジ!
http://gionsasaki.exblog.jp/21795067/


取材日:2015年 5月 10日