京都、八坂通の京料理、割烹 祇園 さゝ木

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初代店主の今とこれから。
次代を担う料理人に伝えたいメッセージ。

佐々木浩×関 孝明(祇園一道・店主)

佐々木浩が、各界の著名人を迎えて対談を繰り広げるシリーズ「人に味あり 味に人あり」。
第13回のゲストは、「祇園 一道」の店主・関 孝明(こうめい)さん。
2011年に祇園にて独立。“鉄板割烹”という新しいジャンルをもたらした料理人だ。
カウンター主体の営業スタイルを貫く、佐々木浩と関さん。
料理人としての「発想力」について、
さらには、カウンターを舞台とした二人の信条について、トークは展開しました。




それぞれが考える、発想力の源


佐々木(以下、佐):料理人とは、実にクリエイティブな職業です。基礎はしっかりと持ちながら、常に発想力と想像力が求められる。関さんは日々、鉄板焼きのイメージを覆す料理を生み出していますよね。そのインスピレーションの源はどこから?

関:休みの日の食べ歩きが、僕にとっては大切です。お食事をいただいている間は、“この食材と食材を、僕が鉄板で調理するとなら…”ということを常に考えています。例えば、9月のコース料理でご提供していた焼きそばには、子持ち鮎と松茸を使っていました。どこから発想を得たのかというと、滋賀「比良山荘」さんの「子持ち鮎と松茸のご飯」です。

佐:子持ち鮎と松茸をどのような調理法で焼きそばに?

関:和え麺にします。鮎は塩を打って焼き上げ、骨と頭を取ります。松茸は食感が残る大きさに切り、土鍋で酒蒸しに。ボウルにネギ油や松茸の酒蒸しから出ただし、醤油やみりんなどからなるかえし、そして麺を入れます。そこに、バーナーで皮目を炙った鮎、松茸を入れて和え、実山椒をかけて完成です。

佐:めっちゃ美味しそうですね。それ、パクりますわ(笑)。私の発想力の根源のひとつに、お客様との会話があります。「あの店とても良かったから行ってみたら?」、「あの店のメイン料理には驚いた」など、お客様は発想のきっかけとなるネタの宝庫。いろんなことを教えてくださいます。私は冗談でパクると言うけれど、自分の中に一旦、落とし込んだ上で咀嚼して、昇華させる作業が大事だと常に考えています。

関:僕もお客様から情報をいただくことが多いかもしれません。料理ジャンルは問わず、テーマはやはり「食材と食材の組み合わせ」。これに尽きますね。

佐:私は、関くんの料理をよく食べさせてもらっています。いつも感じることは、食べ慣れたお客様を満足させるテクニックが随所に潜んでいるということ。黒七味のピリ辛や、ニンニクの使い方など、弱すぎず強すぎずの刺激の出し方が上手い。鉄板なら、料理ジャンルを問わないでしょうから、今後はぜひXO醬や肉醤など”醬(ジャン)"を自家製して使って欲しいですね。

作り手と食べ手、それぞれのカウンター。


関:ありがとうございます。まだまだ頑張らないといけないです。カウンターを介して、お客様の目の前に鉄板があるというのは、武器になります。鉄板は、“音と香り”をお客様に楽しんでいただけますから。さらに。以前、佐々木さんが「美味しいと言ってもらえるより“楽しかった!”と言ってもらいたい」と仰っておられました。僭越ながらその通りだと共感し、いかにお客様に楽しんでいただくかと考えるように。美味しさは当たり前ですから。

佐:「美味しかった。おおきに」は、70点の評価だと思っています。「楽しかったわ!次、いつ空いているの?」、ここまで仰っていただけたら、よっしゃ!となります。

関:でも、開店してから20年近く、ずっと満席じゃないですか。萎える時はないんですか?

佐:何度か、高熱を出した時はありました。でも、風邪をひいても何があっても絶対に、演じ切らないといけません。夜6時半の一斉スタートの際、カウンター前に立ったら、条件反射にすーっと熱が引きました。

関:その経験、僕もあります。どんなにしんどいことがあったとしても、鉄板の前に立つとシャキッといつも通り。スイッチが入るのです。

佐:そう。関さんが言うようにスイッチですよ。私にとってカウンターとは、「舞台」。だから、話は少し逸れますが、矢沢永吉のコンサートを観に行くのです。彼のステージパフォーマンスは、65歳とは思えません。全身を使い、観客を魅了させるのです。私自身、刺激を受けて明日の活力に繋がるんですよね。関くん、今度コンサートにお連れしますよ(笑)。

関:ぜひお願いします!ミュージシャンから刺激を受けて、それがカウンター仕事に繋がるとは、佐々木さんならではですね。僕は家内と2人で店を営業しています。だから、カウンター前でいつもテンパっていますよ。その点、「祇園 さゝ木」はチームじゃないですか。あの17席のカウンター前で、担当スタッフのチーム分けなどされているのですか?そこが知りたいです。

佐:3セクションに分け、カウンターのお客様へのサービスを行っています。お客様が飲まれているお茶の湯呑みの傾き加減で、お茶がもう少ないなと気づきます。例えばですが、その気づきをスルーしたスタッフには閉店後、とことん怒ります。私たちは、お客様を不愉快にさせることはあってはならないのです。

関:2時間半の「祇園 さゝ木 劇場」の裏側には、そんなエピソードがあるのですね。

佐:スタッフたちにも「2時間半、とことん演じなさい」と常に言い聞かせています。また、私は、店の営業中は総合プロデューサー。ですから次、何をしたいのかを察して、動いて欲しいと、スタッフに言います。私が不愉快になったら、その空気がお客様にも伝播しますから。でも、キツい事ばかりを言い続ける上司には誰もついてきません。スタッフは個性も技も十人十色。怒る時はとことんやりますが、でも何かあった時は救いの手を差し伸べる。「包丁使い、上手くなったやん。でも、ここをこうすれば、もっと美しく切れんねん」とアドバイスをすれば、若い子はすっと腑に落ちて、ひとつステップアップできる。できない子がいたとしても、赤ちゃんのハイハイと同じでいずれはできるようになる。要は飴と鞭の使い分けですよ。

関:なるほど。僕はつい、怒ってしまうんですよね。できて当たり前でしょと、思ってしまう。ダメな考えです。飴と鞭、すごく勉強になります。佐々木さんはまさに、プロ野球でいう総監督ですね。

佐:ゆくゆくは「祇園 一道」も、チームで動ける店にして欲しいですよ。今、京都で頑張っている若手料理人の店は、席数10名以下の小さな店が多い。それってもったいないと思うのです。例えば、関くんのお店で若いスタッフを雇います。おそらく、何年後かに独立をするでしょう。その時、独立する料理人は関くんの技を継承している。だからこそ、「祇園 一道」ブランドが生まれる。京料理も同じことが言えます。継承を繰り返すうちにブランドとなったのですから。

関:まずは人探しをするところから頑張ってみたいですね。 今日は、人材育成の話まで、本当に勉強させていただきました。佐々木さん、ありがとうございました。


取材日:2016年 10月27日