霜月の椀 第11回

「吹き寄せ椀」


京都の11月は、街が紅く染まってゆく。
大原など北の方から、木々が少しずつ黄色から紅く変わってゆくさまが美しい。
「11月の椀は、そんな京都の街を感じていただく吹き寄せ椀にしました」と佐々木は話す。
吹き寄せとは、いろいろな食材を色美しく盛る料理を指し、秋の野菜を使うことが多い。
野菜は、ネギ、ゴボウ、ニンジン、シイタケ、小かぶなど。
それらを「祇園ささ木」では、カウンター内に設置されたピザ窯で焼きあげる。
ピザ窯で火入れすることにより、上火や下火という一方からだけの火入れではなく、熱が全体から回ってゆくのだ。
それだけ、野菜の持っている甘味や苦味などが凝縮される。
「鴨のうま味と野菜の味を同時に味わっていただきたい」と。
シャラン産の鴨は、脂をたっぷりたたえている。
皮に包丁目は入れ余分な脂を流しやすくする。
炭で皮目から焼く。脂が炭に落ち炎が立ち上がり、身の部分にも幾分火が入る。
野菜と鴨を出汁の中に入れ、軽く煮こむ。
そうすることにより、出汁は「コクとうま味のかたまりになるのです。
この味こそ、吹き寄せの醍醐味です」と佐々木は力強く語る。
まず、出汁を味わう。
コクと同時に上品ながらインパクトのある何種類ものうま味の結晶が口の中で踊りだすイメージだ。
続いて鴨に噛むと、やや野性味を帯びた味わいを感じる。
続いて野菜。それぞれの甘味、持ち味がしっかり残り、この吹き寄せ椀に魅了されてゆくのがよく分かる。
京都の晩秋、京都の街、その色彩を見事に表現した「吹き寄せ椀」。
椀の表は、なんの表情も見せないが、蓋をあけると、そこに広がっている世界は、嵐山・渡月橋の紅葉である。
そんな佐々木の遊び心もしっっかり楽しんでいただきたい。
ことほど一つの椀の中には、いくつもの物語や世界が盛り込まれているのだ。