葉月の八寸 第8回

「涼しげ」

京都の夏は暑い。
その暑さをいかに涼しく演出することができるか。
それが京都の風情であり、極論すれば教養ともいえるのだ。
京町家の佇まいもその一つである。
間口は狭く、奥行きは長い。風が抜けるような設えになっており、
中庭には緑が植わり、清涼感を与えるようになっている。
この緑という色合いは大切。


料理の場合も、緑が重要な役割を果たす。
「祗園ささ木」の佐々木浩の緑の使い方は定評がある。
緑をいかに効果的に配するかで、印象が大きく異ることを熟知しているのだ。

日本には四季があり、それぞれ特徴を持つ食材がある。
それを使うことが、もっとも季節感を表現する手立てだ。


京都の夏。
とうもろこしが届く。
それをかき揚げにする。
枝豆の同じくかき揚げとなる。
油でうま味を閉じ込める手法である。



川海老も登場だ。貴重な食材で、この収穫によって秋以降の
天然鰻の採れ具合も違うというのである。
川海老はさっと素揚げにした。


佐々木が得意とする夏の代表的な鱧は寿司に仕立てた。
身の厚い鱧のふっくらした食感と寿司飯の相性がたまらなく素晴らしい。
鯖も同様に寿司とした。この二つが揃うことでまた季節感がたかまりを見せるのであった。



ガラスの器には、イカの酒盗和えとオクラの花を持った。
ガラスはかつて義山(ギヤマン)とも呼ばれ、その表情が涼しさを呼び、
夏の料理には欠かせないものである。
佐々木もまた、ここで夏らしさをあらわすためにガラスの器を用いたのであった。



また鮎という夏の京都を象徴する食材は開きにして焼く。
そこに緑の蓼酢を散らすことで、またしても味わいの深まりと清涼感を与えたのである。


すべてが理にかない、味わいを主としながらも、
季節の移ろいを十二分に配慮した「祗園ささ木」の8月の八寸がある。