文月の八寸 第7回

「七夕」

7月7日。七夕の夜、おりひめとひこぼしが待ちに待った
再会という願いを叶える。
人々は二人のように、願い事がかなうように、短冊にいろいろな願いを書いて、
笹や竹の葉に飾るようになった。

しかし、梶の葉に、願いを書くのが本来の姿であった。
というのも梶は神聖な木で、多くの神事に使われたのであった。

そこに短冊に見立てた流しものが配置される。
この風景は、まるで風に舞う七夕の様子を感じさせて余りある。

流しものは3つある。
まず百合根と海老。赤い色合いとクリーム色のコントラストが柔らかい。
ゼラチンで固めたゼリーのベースは昆布と鰹の出汁である。
口溶けもよく、口のなかで素材がぐっと生きてくる。

つぎは、オクラと青ずいき、白ずいき。ほのから緑の発色が、
まさに七夕の夕暮れを印象つけるのであった。
ベースの昆布と鰹の出汁に米を炒った香りをつける。
それはおこげのイメージで、香ばしさを増すことで、
野菜の持ち味が強調されたのである。

そして鱧と鱧の子である。
これは鱧の骨から取った出汁を用いる。
京都の夏の風物詩・祇園祭は、通称・鱧まつりともいわれる。
梅雨明けの水分を含んだ鱧の味わいは、だれもが京都の夏を思い起こす食材でもある。
この味わいは、上質な鱧の椀ものを飲んだときと同じ感想を漏らしたほどだ。

このように佐々木は、季節感を流しもの(短冊)に詰め込み、
七夕の情景を、見事に八寸の落とし込んだのであった。
八寸は、季節だけでなく、その時そのときならではの行事や
習わしと密接の結びついていることを知るのであった。