葉月の焼物 第8回

「鮎の焼き物 うるか風味」

京都の夏は鮎と鱧で終始する。
数多ある料理屋で、さまざまな鮎や鱧が供されるのだ。
「京都に来られて、うちの店が何軒目か教えていただくと、非常にありがたいです。
どの店でも鮎や鱧を食べられていますから」と佐々木は語る。
一軒目と最後の店では、印象が大きく変わることになる。
佐々木は一年をかけて鮎の料理を考える。

鮎の内臓を裏ごし「うるか」を作る。
一年間寝かしたうるかの味わいは、日本ならではの発酵調味料となる。
これだけでも清酒が飲めるという味わい。

鮎は三枚に下ろす。
頭の部分と中骨は外し、風干しをする。
その後、素揚げをしてカリッとした食感を出すのだ。

二枚の身には、酒と塩と醤油で味を調えたうるかを挟む。
身には切れ目を入れることで、焼いた時の縮みを防ぐ。

串打ちした鮎を炭火で焼いてゆく。
皮目に焼き色がついてくる。
うるかの味わいと香りが、身にじっくり染みこむ。
仕上げは、蓋をして焼けた香りを鮎に移してゆくのである。
燻香をまとうことで、鮎の味わいに深みがあらわれる。

それを青竹に乗せると、緑の色彩に茶系の鮎が、まるで生きているようにも感じる。
そして、素揚げした頭と中骨を添え、「祇園ささ木」の鮎料理は完成する。
うるかの濃密な味わいとしっとりした身の感覚。
また頭や骨の香ばしさの対比効果は、唯一無比の鮎料理を作り上げる。
一年という歳月をかけ、作り上げた味わい。

夏の京都。鮎や鱧が氾濫する時期だが、この鮎の焼き物は、どこにでもない出会いをもたらしてくれる。
確かに鮎をだけを食べると、うるかの力で清酒を欲する。
だが、頭や骨まで一緒に食べると、なんとワインが欲しくなってくるから不思議である。
「ホントに夏の鮎は考えることが多いです。基本なは塩焼きがいちばんおいしいと思われています。
別のことをするには、それを超える工夫と味わいが必要だと考えます」と佐々木はしっかり言いきった。
その言葉が実感できる一品である。