如月の焼物 第2回

「ふぐ白子風干し焼き ふぐだし掛け」

「だいたい2キロはあるかと思います」と佐々木はぷっくりふとった河豚をまな板に置きながら話した。
「このぐらいの大きさでないと白子が太っていません」とも。
まさに河豚はまな板の上で横たわるというより、すっと立っていた。

すっと包丁が入る。皮がきれいに外される。
身が部位に分かれてゆく。

身の部分は昆布締めにされる。「これでうま味がぐっと立ってきます」と。
丸々とした白子は塩打ちをして風にさらす。三日間風を当てるのだが、
毎日焼酎をぬりながらである。塩分の調整と表面の湿気をある程度保つためでもある。

三日後、いよいよ調理が再開される。
白子は串打ちされ炭火で表面を軽く炙る。
塩はしっかり中まで入っている。
香ばしさがおいしさを強調するのだ。

冬場のネギは、中にたっぷりの蜜をふくむ。
それをきれいにこそげとる。

身も適度な大きさに切り、炭火で火をいれる。香りが立ち上ってくる。
三日前の河豚とはまるで別物のような表情と香りを放っているのだ。
あらあらしさが見事に影を潜め、秘めたる味わいを包み込んでいるようなのである。

器に白子を並べる。
寄り添うように身を重ねる。
河豚のアラと白菜・ネギでとっただしをかける。
ネギの蜜を置き、柚子を重ね、京人参の赤みを加える。
白子の凝縮した味わいには、おもわず喉がなり、それを少しずつだしが緩和してくれる。
次の瞬間、身を口の中に入れると、再び河豚の凝縮感が蘇るという、
佐々木の魔法がここで初めて理解することになる。

日本人にとって、いまでは河豚は大いなるご馳走である。
てっさに始まり、ぶつ切り、湯引き、てっちり、雑炊など、じつに多彩な味わい方がある。
だが、ささ木の「ふぐの白子風干し焼き、ふぐだし掛け」は、
河豚の世界にまたあらたな風を送り込んだ傑作となった。