神無月の焼物 第10回

「鰻と松茸の出会い」

日本料理の世界で「ハモまつ」という言葉が秋になると登場する。
名残の鱧と走りの松茸が一瞬出会う。その出会いものを調理するのが、
日本料理の醍醐味でもあり、季節を大切にする気持ちの現われでもあある。
「鱧と松茸の料理は、うちでもよくやるんですが、鰻の旬は秋。
その鰻と松茸、まさに旬の出会いを愉しんでもらいたいと思っています」
と佐々木は、料理について説明をした。

鰻は開いて塩を打つ。
コンスターチと強力粉をあわせ、身に塗る。
合わせて筒状にしてラップで巻き蒸し上げる。
蒸し上がれば、串打ちをして炭火で炙る。

皮目はこんがりと焼けてくる。余分な脂が抜けてゆく、旨味だけが凝縮される。
焦げ目は視覚的にも美味しさを伝えてくれる。
また、焦げ目の食感と味わいもまた美味さのファクターとして重要なポイントとなるのだ。

一方の松茸。
下に昆布を敷き、約8分間、ピザ窯で火入れをするのだ。
熱を加えることで、松茸の味わいが明確になり、また昆布のうま味と香りが松茸に移行するのである。
ここでも佐々木は、ピザ窯が全体から火が入ることを熟知しての手法ともいえる。

鰻にかけるタレは、カラメルと黒ごま酢がメインとなる。
トロリとして濃密な甘みと酸味の風味が、鰻に力を与えてくれるのだ。
サクッとした歯ごたえから、続いてねっとりした食感に味わいが深まりをみせる。
かたや松茸はキユっとした噛み心地の向こうから秋の訪れを告げる香りがやってくるようである。
酸味のあるタレもいい働きをする。

鰻はあくまでどっしりと重みを感じさせ、松茸の軽やかな酸味とのバランスが、
旬の出会いを告げることになるのである。
夏場のタレ焼きの鰻も結構夏バテ対策にはうれしいのだが、
今回のように旬の松茸との出会いを食べると、鰻に対する印象も少しずつ変化してゆくことに気づくのであった。

「鰻の旬が秋ということを知らない方のおられると思います。
天然の鰻は、これからの寒い冬に向かって脂を蓄えて行く時期なんです」と。
この日本の旬を味わう料理からも学ぶことは多い。