睦月の焼物 第1回

「鯛 赤飯包み 奉書巻」

明けましておめでとうございます。
今回から始まる「ささ木の焼物」シリーズ・第一弾は、「新年は皮切り、やはりめでたいものでゆきます」
と佐々木浩は迷うことなく、めでたい「鯛」を選んだ。

「京都は、にらみ鯛といって、姿焼きを三が日は箸をつけず縁起物ということで食卓を飾るだけで、
4日目から温めて食べるという習慣があって、姿焼きがいちばん豪快なんですが、
僕は京都の奥深さを表現してみました」と佐々木はきっぱり言い切った。

この時期淡路島の鯛がかなり旨くなる。
2.5キロから3キロの鯛を揃える。「もしかしたら、一年でいまがいちばん旨いかもしれません。
脂というか味のノリ具合が違います」。
確かにそのまま食べても味の濃さをしっかり感じる。
三枚におろし、そこから造りにひいてゆく。

一方、めでたいときには赤飯を炊く。
それを小さな寿司飯ぐらいの大きさに握る。
その赤飯をくるむように鯛で巻いてゆく。
そしてサラマンダーで火をいれる。

火が入った鯛は白くなり、赤飯と紅白の状態となるのだ。
見た目にも麗しく、まさに新春を寿ぐ献立という風情が漂ってくるのだ。
これを奉書で巻き、金銀の水引で華やかさを表すのである

ところが佐々木はそれだけでは満足しなかった。
奉書で巻く前にカラスミを加えた。カラスミが持つ、適度な塩分と凝縮されたうま味が
鯛と赤飯に、新たな味わいを生み出した。
「奉書巻きというのが奥深いですが、ここはカラスミでインパクトを与えておかないと、
僕の料理になりません」と。

焼物は素材の味わいがストレートに出る献立だと、佐々木は言う。
まして塩焼きともなれば尚更である。
今回の焼物は、鯛というめでたい魚、それも時期的にも素晴らしいモノを仕入れ、
塩焼きながらも赤飯とカラスミを加え、新年を見事に写しとった佐々木浩の
焼物にかける意気込みが見事に伝わってくる一皿となった。

「焼物は酒を酌み交わすというイメージがあるのです。
反対に酒が欲しくならないような焼物はアカンということになります。
酒を呼ぶような料理。それが出てくるだけでテンションが上ってきます」。

この「鯛 赤飯包み 奉書巻」が出てくると、そばには徳利とお猪口が欲しくなるのは当然ということなるだろう。