文月の〆のご飯 第8回

「鱧の源平」

京都の夏は、どの料理店でも鮎が出る。
それも塩焼きがほとんどである。
もちろん「祇園ささ木」でも塩焼きは供される。塩焼きは鮎に丸串を刺し、やや頭の方を低くして焼くことが多い。
「鮎が持っている脂を頭のほうに寄せて、その脂で揚げるように、特にエラの部分を焼いてやるとやると
頭はカリッと、お腹のところはふんわりと焼けるのです」と説明する。
また、佐々木は丸串ではなく平串を使う。
「平串のほうが焼いている時に安定するのです。そして表と裏だけでなく上下にもきちんと焼くので4面焼きです」とも話す。
同じ一尾の鮎を焼くのでも、佐々木はそこまで鮎の身体を考えながら焼くのだ。

さて、その佐々木が提案するのは、ピザ窯を使った「鮎のピザ」である。
「せっかくピザ窯があるので、それを使って挑戦しました」
といってもピザ生地を使うわけにはいかない。
もち米を7分搗き、それをもちを伸ばすように平たくし生地とする。
そこに豆腐にごまペースト、塩、酢を加え混ぜたピュレを塗りつける。ピザソースである。

そこに京都の夏野菜の代表選手・加茂茄子の薄切りをのせる。
鮎は、内臓もそのまま、振り塩をして風干しである。それを軽く焼き加茂茄子に重ねる。
「それだけでも鮎ピザになるのですが、うま味を加えるためにカチョカバロをのせました」となる。
それでピザ窯で焼く。

カチョカバロが溶け、その脂分とうま味が鮎にも茄子にも浸透する。
茄子は脂との相性がすごくいい。
カチョカバロと鮎の脂が茄子にうま味をプラスする。ここで茄子を使う理由が明確になるのだ。
そこに蓼のペーストをかけると佐々木の鮎ピザが完成である。



このピザは鮎の苦味と香りを生かした世界にも類をみない一枚である。
口に含むとチーズのコクについで鮎の苦味がぐっと拡がり、そして鮎と茄子の一体感を楽しむことができるのだ。
もち米をつかうことで粘りも感じる。
「こんなご飯があってもいいかなと思います」と佐々木は微苦笑混じりに話すが、
このようなチャレンジを繰り返すことが「祇園ささ木」を佐々木たらしめる行為である。