皐月の〆のご飯 第5回

寿司 三本勝負

佐々木浩の眼が光る。
寿司飯に酢を合わせ、混ぜ合わせるときに見せる視線は鋭い。
米は古米を使う。一年貯蔵庫で寝かす。余分な水分が飛ぶ。
その米に昆布を入れ、少し固めに炊き上げる。
そこに千鳥酢・少量の砂糖、塩を加えた合わせ酢入れる。
「僕は寿司職人じゃないです。でも寿司が大好き。自然と真剣になるのです」と佐々木は真顔で語る。

江戸前のにぎりではない。
関西を代表する三つの寿司を選んだ。
京都なら、それぞれ料理屋が矜持を持って供する鯖寿司。
料理屋ならではの贅沢感を持ち合わせた太巻き。
昔ながらの仕事が生きる箱寿司。
鯖寿司は寿司飯に壬生菜の浅漬を加え、酸味を足すというのは、
脂ののった鯖を受け止めるために必要な仕事だ。
鯖は一週間塩で締め、約10分から酢で洗う。
その鯖と酸味の効いた寿司飯の一体感こそ、佐々木が常に話す
「料理はバランス!」といことを体現しているのだ。

寿司にすることによって鯖が生きてくる。
この寿司飯があるから鯖が安心して本領発揮できる。
太巻き。トロ、イカ、キュウリ、シイタケ、かんぴょう、
たくわん、穴子、車海老、三つ葉、卵と10種類の具材が入る。
「もう17・8年前になります。この太巻きをやり始めて」。
南座を始め、部屋見舞いとして珍重された。
いまでも、その習慣は消えることはないが、
「佐々木といえば太巻き」という印象すら定着した感がある。
それは10種類の具材の力が見事であり、それを一本にまとめる技があってこそなのである。

そして箱寿司。
これは一つの箱に中に寿司飯、厚焼き卵、鯛の昆布じめ、卵、車海老、穴子が同居する。
それを均等な力で押しこむことによって形成される。
関西ならではの手法で、これもまた上下左右を入れ替え、
力を加えるという伝統の技術である。「こういう仕事は伝えていかないと、
職人として恥ずかしいです」と佐々木は話す。
一見、艶やかにみえる「祇園ささ木」の仕事だが、
じつはこのような伝統の技の積み重ねが、しっかりあるのだ。



今回、三種の寿司をプレゼンテーションする佐々木浩の料理人としての魂と誇りが、この姿となった。