卯月の〆のご飯 第4回

筍ごはん

「たけのこって、竹かんむりに旬と書きますでしょう。
それだけ旬はホントに短いのです。一瞬!」
と佐々木は筍に包丁を入れながら話してくれた。
産地は、京都山城・塚原の朝堀りである。
京都の料理人が、塚原の筍を求める。

皮をつけたままゆがく。というのは、皮からも筍特有の香りや味わいが出て、
それが身に味わいとなって戻ってゆくから。
底に少し包丁目を入れることで、ゆがく時間が軽減される。
たっぷりの水と米ぬか、唐辛子が入る。

「竹串がすっと入ると、大丈夫です」
皮をきれいに外し、いよいよ筍にだしの味わいを含ませる。
鍋底に昆布を敷き、その上に筍をのせる。
そしてかつおと昆布出汁をたっぷり注ぐ。
約10分間、炊いてゆく。
筍は柔らかさを増し、出汁の味わいを含んでゆく

さあ、いよいよご飯との出会いである。
御飯の上に小さき切った筍を積む。そこに菜の花と木の芽をしっかり加える。
黄色に緑。彩りも美しいが、木の芽の香りが鼻腔をくすぐってくれるのだ。



ここから佐々木が筍と御飯を一気にかき混ぜる。
湯気は、どんどん立ち昇り、筍の香りも同時に広がってゆく。
「わぁっ」と歓声があがり、食べる側の気分の熱くなる。
それが店全体に伝播して、空気感を盛り上げてゆくことになる。
このダイナミックな仕事こそ、佐々木の真骨頂といえる。

「少しずつもらしてもらいます。なんぼでおかわりしてください」
置かれた茶碗にすぐ手が伸びる。
ふわっと湯気の中から筍、木の芽の香りがこちらに飛び込んでくる。
ぞれが鼻腔で暴れ、胃袋と直結しているのではないかと思えるほどに、
胃袋が大きな声をあげる。「早く来てくれ!」と。
一口目で気分はランナーズハイのテンションだ。
筍の食感に、舌が踊る。御飯と一緒に食べる。味わいが瞬時に濃厚となる。
味蕾が確実に活性化していっるのだと、不思議な納得感がある。
驚いたのは、御飯一粒ひとつぶごとに、筍のエキスが御飯にしっかり忍び込んでいるのが分かる。
なんとも贅沢な御飯で、日本ならではの一膳だと思う。