如月の〆のご飯 第2回

からすみのお粥さん

「1月に七草粥をたべますが、僕にとって2月はお粥さんの季節なんです」と佐々木は
「からすみのお粥さん」を前にしてつぶやいた。

「祇園ささ木」のからすみは、11月末から一ヶ月かけて自分たちで作りあげる。
「やはり塩分濃度を自分で調整できるのが大事なところです」とも話す。
ボラの卵巣を丁寧に血抜きをしてから塩漬けにする。その後塩抜きをして乾燥させたものだが、
三大珍味の一つとして数えられる高級な食材だ。
高級な食材だけに料理はシンプルに、というのが佐々木の心意気である。
それもたっぷり使ってこそ、その真価が発揮されると惜しげもなく使うのだ。

今回の「からすみのお粥さん」もごくシンプルである。
米と水、わずかな塩水と醤油のみ。あとはからすみの分量によって味は変わってくる。
鍋に米を入れ、そこに水を張りあとはことこと炊くのみ。
味付けはわずかな塩水と醤油。火が入り次第にお米に粘りがでてくる。

たえまなく木べらで丹念に混ぜる。かなりところが出たところで、からすみをふんだんに削る。
からすみの一枚いちまいが、お粥さんの旨みに奥行くを与える。
「日本ではお粥さんなんですが、向こうではリゾットですね。
リゾットは粘りをださないようにしますが、お粥はそこが違います」とも話す。
最初に申したように、高級食材だからこそたっぷりと使う。

からすみのねっとりした食感が、熱々のお粥と出会ったときに、
よりその粘りが強調され、温度でとけてゆく。
また、そこにお粥さんのエッセンスがプラスされ、唯一無比の存在となってゆく。
コクと旨みの二重奏に、食べると思わず笑みがこぼれ落ちる。
米という存在の奥行きの深さに改めてエールを送りたくなる瞬間である。
熱々の鍋からからすみの香りが立ち昇り、それが鼻腔を刺激する。
白とオレンジが織りなす世界に、しばし酔いしれるのである。