霜月の〆のご飯 第11回

「鯛茶」

「鯛は日本の象徴だと思います。そしてなにより『魚の王様』です」と佐々木は言い切ったのだ。
魚の王様。それは赤という鯛の色合いにもよるだろうし、
「めでたい」という言葉からも日本人には非常に馴染みの深い魚である。
また七福神恵比須さんが釣り上げている魚も鯛で、よろこばしい象徴といえる。
冠婚葬祭でも鯛が使われる。
「秋の紅葉鯛のほうが、桜鯛よりうま味は強いと思います。色合いも秋のほうが濃いですから」と
佐々木も秋の鯛に対する思いは深いようだ。
その鯛を茶漬けにしようというのだから贅沢な献立である。

鯛は薄塩をして一晩寝かせる。味が馴染んだところで一枚いちまいやや厚めに切ってゆく。
それをくるむ胡麻ダレは、すり胡麻に醤油、清酒、みりん、卵黄、砂糖を加え練り合わせる。
そこにふっくらとした鯛を入れ、味をつける。
一方、茶漬けといっても茶をかけるのではなく、鯛の頭から取った出しをかけるのだ。
頭はしっかり焼いて香ばしさを出す。そこに塩をして味わいを引き出し。
昆布・清酒・水で炊き上げ、鯛のだしをつくる。これだけ飲んでも十二分にうまさを感じる。

炊きあがりの艶やかな白いご飯の上に、胡麻ダレをまとった鯛をのせ、そこから鯛のだしをかける。
生の鯛にだしの熱さで火が入る。
半生の火通しである。
ネギとあられをふり、一気にかきこむ。
胡麻の味わいを感じながら、鯛のコクがおいかけてくる。
そして日本人ならではのご飯との相性が生まれてくるのだ。

鯛を鯛のだしで食べる。
コクはもちろんのこと、味わいに深みがある。
やはり料理屋ならではの、四隅をきちっと押さえた一品といえるのだ。
それを一気にかきこむというダイナミズムこそ、佐々木の料理の真骨頂であり、
そのライブ感を見事に演出できる佐々木の力量発揮という茶漬けとなった。