神無月の〆のご飯 第10回

「鱧と松茸の玉締め」

秋のご馳走は茸である。
日本の茸といえば「松茸」。
その勇壮たる姿の美しさに、おもわず心がゆれる。
松茸は、かるく湿らした紙で汚れを拭き取るぐらいがいい。水で洗うと香りと味がにげてゆく。
炭火でさっと炙って塩をふる。キュッとした歯ごたえと共に、エキスが口の中にジュワッとひろがる。
そう、これこれ。と私達は、日本の秋を実感するのだ。
松茸は蒸してもよし、贅沢に使うならすき焼きの具材にもなる。また松茸ご飯という手もある。
だが、佐々木浩は「じつは鱧が終わりですが、いちばん脂が乗っておいしい季節でもあります。
そこに松茸が出始める。この出会いものをいかさないわけにはいきません」と言い切った。
日本の料理は季節感を尊ぶことが身上だ。

だが、佐々木浩は「じつは鱧が終わりですが、いちばん脂が乗っておいしい季節でもあります。
そこに松茸が出始める。この出会いものをいかさないわけにはいきません」と言い切った。
日本の料理は季節感を尊ぶことが身上だ。
名残の鱧と走りの松茸が、「祇園ささ木」のカウンターで炸裂する。
鱧は骨切りを施す。
その包丁にねっとり脂が付着するぐらいだ。
土鍋に米を入れる。
そこに大胆に切った松茸を惜しげもなく入れる。その上に骨切りした鱧を並べる。
溶き卵。つまりうま味の効いただしと溶いた卵が合わさった液体を、鱧がひたひたになるぐらいにはる。

それを蒸し上げるように炊いてゆく。
適度なところで蓋をあけると、湯気と同時に松茸だけではない香りがぐっとせまるように立ち上ってくるのだ。
お玉ですくう。
卵にはほどよく火が入る。
ゆるい茶碗蒸しのなかに鱧がいる。次に松茸が顔を覗かせる。
最後には、それらの養分を吸い込んだご飯が登場である。

じつは、このご飯こそやはり主役となるのだ。
この季節ならではの特級品・鱧と松茸のハーモニーに包み込まれたご飯は、
食べる人の胃袋と気持ちに深い喜びをもたらしてくれるのだ。
卵のコクも感じながら「祇園ささ木」の10月・秋の味覚を満喫することになる。